ヒトミさんからも返事を貰った。
彼女も都内に在住のSEで30歳だった。趣味は読書に音楽鑑賞とパン作り。
音楽はミスチルが好きで、彼女は宮部みゆきが好きだそうだ。婚活女性は「宮部みゆき」が好きな人が多いのかと思うくらい好きな作家で、「宮部みゆき」を出す人が多い。
パンを作れるんて、単純に凄いと思う。毎朝、出来立てのパンが食べれたら、なんて幸せだろう。
嫁や娘と一緒にパン作りなんてのも、すごくイイ。
あんこを入れて、アンパン。クリームを入れてクリームパン。単純だけど自分達で作ったパンならば格別に美味しくなるはずだ。
いやいや、そこまで凝らなくても、何も入れずにロールパンだけでもできたてをみんなで食べられれば最高だろう。
ちなみに、僕は研究職で実験を毎日しているので、工程も似ている料理も好きなのだ。
アメリカに行く前に彼女がいた時は、餃子や天ぷらを作って一緒に食べていた。
作ったものを美味しそうに食べてくれるのは、嬉しい。実験で上手く行って、この成果が誰かの役に立つのかもしれないと思うのと一緒だ。
ただ、1人暮らしだったので自炊はせずアメリカ時代はジャンクフードを食べまくり、日本に帰国してからも、お弁当や社員食堂で食べてばかりで、自分では作ってない。
ひとり暮らしで食べて貰う相手がいないとあまり作る気がしないのだ。
料理好きな奥さんと結婚できたら、あーだこーだ言いながら色んなものを作ってみたい。
パン作りも一緒に行いたい。
ヒトミさんの趣味をお話掲示板で聞いていたので、会うのが楽しみだった。
ヒトミさんとは週末の昼過ぎにお茶をすることになった。
婚活を始めてから最近は、お話掲示板のやり取りをしている女性の数も増え、それに伴いお見合いする女性も多くなり、週末は忙しくなっている。
1日に一人では追いつか無いので、1日にランチ、お茶、夕食という強行スケジュールになってしまう日もある。
ヒトミさんとの待ち合わせ場所に5分前に着く。
あらかじめ、周辺でお茶に良さそうなお店を見といたので、ヒトミさんが来たら、そこのお店に向かう予定だ。
ヒトミさんに似た人がいるな。と思っていると相手の方から声をかけてくれた。
「ジャンプさんですか?ヒトミです。こんにちは。」
「ヒトミさん、こんにちは。ジャンプです。どこか行かれたいお店はありますか?もし、良ければちょっと歩いたところにカフェがあるので、そちらでもどうでしょうか?」
「はい、じゃあ、そこでお願いします。」
カフェに移動して、ケーキセットを二人で頼んだ。
ヒトミさんは読書では、宮部みゆきが好きだそうだ。
僕が宮部みゆきで読んだことがあるのは、「理由」一冊だ。
「宮部みゆきさんの作品は、僕も理由を読んだことがあります。どんなところが好きなんですか?」
「時間を忘れられるところです。」
「あー、そうなんですか。」
「………」
あっ、しまった会話が終わってしまった。
沈黙が続く。
これはいけないと思い、
「パン作りが趣味なんて、凄いですね。どんなパンを作られるですか?」
「食パンも作りますし、色々作ります。最近は、コーンを混ぜ込んたコーンパンがお気に入りです。」
「コーンパン美味しそうですね。結構作られるんですか?」
「はい、気分が落ち込んだ時やイライラした時にパンを捏ねてるといつの間にかスッキリしてるんです。」
「あー、そうなんですか。」
あっ、これも会話が終わってしまった。
沈黙が続く。
今まで会ってきた女性達は、自分からよく話してくれる人が多かったが、ヒトミさんは違う。
寡黙なのか僕に興味が無いのか、話が続かない。
会話は言葉のキャチボールなので、一人で話しても意味が無い。
人生のパートナーとは毎日、日々の出来事や自分の思ってることを言い合いたい。
そして相手を理解したいし、自分も相手に理解して欲しい。
今回ヒトミさんと会ったことにより、僕は結婚したら日々の話を分かち合える女性を人生のパートナーとして求めていると改めて思った。
ヒトミさんとは1時間ほど話をして解散した。
もう会うことは無いだろう。と思いつつ。
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